砂時計

2

雪は解けて、暖かな風が春を運んで、桜の蕾を膨らませる季節になった。

自分自身には、春の足音さえ聞こえない。

毎日、メッセージを送ることすら辛くなってきた。

『ありがとう』
『お疲れ様』

そんなメッセージのついたスタンプを送るのが、精いっぱいの日々。返信が届いても、未読のまま、朝を迎えることが増えてきた。

木々がザワザワと揺れ、外に出なくても風が強く吹いているのがわかる、朝。

どんなに辛くても、苦しくても、春が来るまでは弱音を吐かないと決めたのに。

心身ともに限界を迎えていた。

『あいたい』

その四文字を、震える指先で綴ると、自然に涙がこぼれた。涙がこぼれて、酷く咳き込んだ。

その刹那、手にしたスマホが、真っ赤に染まった。

< 3 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop