砂時計
そもそも、彼とは不思議な縁で結ばれた。彼が縁を結んでくれた、と言うのが、正しいのかもしれない。

いつものようにJRなんば駅から、地下鉄四ツ橋線に向かい、歩いているときだった。

ふいに、腕を掴まれて、びっくりして立ち止まる。

『あ! すみません。痴漢ではありませんから』

私の腕を掴んだのは、体格のいい、いかにも体育会系の男性。がっしりとした体格のせいか、スーツ姿が窮屈に見えた。

『……そうですね』

お尻を触られたわけでも、胸をわしづかみにされたわけでもない。ポカンと口を開けたまま、男性をみつめた。

『ごめんなさい。今日、三十になったから』

パッと腕を離して、男性が言い訳にならない言い訳をした。

『は?』

『三十になったから、ずっとみつめていたあなたに、告白をしようと思って』

『……とりあえず、歩きながら話しませんか?』

男性の言うことが理解できず、私からそう提案した。男性は、私の提案に従い、歩き始めた。



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