嘘もまことも、この涙も
背中越しの
 


ごそごそと、背後で何かが動く気配がして目が覚めた。
体の向きは変えないまま、折り曲げていた足でその「何か」を蹴飛ばしてみれば、いたっ!と間抜けな悲鳴があがる。



「なんだ、起きてたの?」

「……ひとの布団の中に勝手に入ってこないでもらえますかね」

「えーだってやっぱりひとりで床で寝るの寒いし寂しいし」

「じゃあさっさと彼女のとこ帰ればいいじゃん……」


眠たい目を凝らしながら枕脇の時計を見てみると、針がさすのは02:11。
……ああもう、こんな夜中に何なの。

苛立ちつつうとうとしていると、冷たいこと言うなよう、なんて甘えた声を出しながら彼はそのまま無遠慮に布団の中へ押し入ってきた。
そしてぴったりと私の背中にひっついてきたものだから、今度は肘で思い切りど突いてやる。

「いって! ひどい!」

「くっつくな私で暖を取るな」

「なんだよー俺とちさの仲だろー」

「……」



仲、とは。

この男にとって、私との仲はどんな仲だというのだろう。

彼女と喧嘩して、同棲してるアパートを飛び出して、今晩泊めてくれと突然部屋に転がり込んできて。
互いのプライベートなんてお構いなし。
遠慮のいらないお手軽便利な避難場所。


まあ、彼にとってはその程度のものなのかもしれない。

――でも私は、


「たまにはキョーダイ水入らず、な」



たまに、無性に泣きたくなる。



 
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