嘘もまことも、この涙も
 


私と彼は、きょうだいだ。
でも血は繋がっていない。
家族になったのは、私が小学6年生、彼が中学2年生の頃だった。

私は人見知りする方だったけれど彼はどちらかといえば社交的で、最初こそギクシャクしていたもののすぐに打ち解けた。

家族になって10年。今ではもう、何でも言い合える本当のきょうだいのようになれていると思う。血が繋がっていないなんて、言わなければきっと誰にもわからない。


彼はいつも優しい。
すごくすごく、私を可愛がってくれる。


……ただ、私は、

彼ときょうだいになれて良かったと思ったことは、一度もない。





「……ちさー、もう寝た?」

「……もう寝た」

「……ごめんな、迷惑かけて」

「……いいよ別に、」


狭いベッドの上に、少しだけ隙間をあけて、大人がふたり。
私は相変わらず彼に背中を向けていて、じんわりあたたかくなった背中越しに聞こえてくる声は、なんだか弱々しい。

よっぽどの大喧嘩だったんだろう。
わざわざ首を突っ込んだりはしないけれど、部屋を訪ねてきたときから、彼は憔悴し切っていた。

大したことじゃないんだと明るく振舞ってはいるけれど。
無理をしてる。私にはわかる。

家族だから、わかる。


「明日帰って、ちゃんと仲直りしなよ」


うん、と頷く声と、小さく鼻をすする音が聞こえた。

彼は心細いのだ。不安で不安で仕方なくて、誰かにそばに居てほしいのだ。しっかりしろと、背中を押してもらいたいのだ。


 
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