俺のことを好きにさせてやる
成瀬くんの誘惑
「おはよう、梨乃」
この日だけは、特別だった。
「おはよう……優斗」
毎週金曜日は、私にとって特別な日だった。
彼、青柳優斗にはとても可愛い彼女がいて
私なんかが叶うような相手ではなかった。
そんな私が、彼と一緒にいることを
唯一許される時間が、
彼女のいない金曜日だけだった。
「……みやびちゃん、大丈夫?」
「うん、今日の検査次第で通院なくなるかもって」
彼女の斎藤みやびちゃんは、
心臓病を持っていた。
そのおかげで、と言ったら悪い言い方かもしれないが
金曜日は私が彼を独占できる
シアワセな日であった。
「……そっか、よかったね」
だから彼の口からその事実を知った時、
あぁ、一緒にいられる日がなくなってしまうんだ
と、ひどく落ち込んだ。
そんな私とは裏腹に、
彼は嬉しそうに微笑んだ。
こんなに惨めで苦しいことはきっとないだろう。
私はただ、彼の笑顔をみて微笑み返すことしかできなかった。
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