俺のことを好きにさせてやる
校舎を出ると、彼の優しかった顔が歪んだ。
原因は優斗だった。
目の前に、優斗とみやびちゃんの姿があったからだ。
病院の帰りに会いにきたのか、
たまたまなのかは分からないけれど、
二人の間には幸せそうなオーラが溢れていた。
そのとき私は、確信した。
「……よかったね、優斗」
みやびちゃんの通院はなくなるんだ、と。
ふぅ、と小さく息を吐くと、成瀬くんが私の手を取った。
「お前、ちょっとくらい嫌な女になれよ」
「え?」
少し怒ったようにそう言うと、
成瀬くんは彼らの方へと向かった。
「ちょっと、成瀬く……」
コチラに気づいた優斗と目が合って
言葉が詰まった。
私たちの関係を疑うかのような二人の視線を感じる。
ちら、と成瀬くんを横目にみると同時に
彼が口を開いた。
「お前、病人なんじゃねぇの?寄り道してないで帰れよ」
恐らく、みやびちゃんに向けたであろう言葉に私はびっくりした。
そんな私を無視して、成瀬くんは私を連れてその場を去った。
「悪かったな、」と小さく呟いた成瀬くんは真っ直ぐ前を向いたままだった。
「……ううん、」
心の中でどこかスッキリしている自分がいて、
ありがとうって言いそうになった。
でも、それを言ったら優斗を敵に回すみたいで黙っていることしかできなかった。