ココアの甘さ
「さすがに俺も不安だった。
でも見合いをセッティングしてくれて、美華が来てくれた。
それが本当に嬉しかったよ。
って言っても、この一年、美華の性格は分かってたから写真を見ないで来ることも分かってて、その性格を利用した。」

彼から告げられる事実に、何も返せずただ黙り込むしかできない。

「聴きたいことは終わった?なら、行こう。」

ガタッと椅子を引く音が聞こえると、恵介がテーブルにお金を置いて私の手を引いた。

お店の外に出るとタクシーに乗せられて、告げられたのは私の知らない住所。

「ねぇ、どこに向かうの?」
「俺の家。」

...つまり、それは、そういうこと?

経験がない私でも分かる。

もしかしたら、そうなのかもしれない。

緊張でどうにかなってしまいそうで。
タクシーが止まるまで、言葉を発せず俯いたままだった。
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