ココアの甘さ
頑なに認めない彼の目の下に手を伸ばし、下瞼を軽く引いた。

「ほら、貧血の症状が出てる。良いから、今日は大人しくココアでも飲んで。」
「何で貧血にココア?」
「気休めにしかならないけど、ココアにも鉄分は含まれてるから。」
「...次来たときは酒飲んで美華に奢らせてやる。」
「はいはい、分かったから。」

おまたせしました、とココアが置かれ恵介は嫌そうにそれを手に取った。

「て言うか、目を見ただけで貧血って分かるんだな。」
「まあね。昔聞いたことがあったから。」

「つまりは俺のことを良く見てたってことだな。」
「勘違いしないで。」
「はいはい。」

彼と話している私は、全く可愛くない。
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