星の街に君と私
あ。
音楽室の匂い。
ちょっとだけ、歌が上手くなった気分にさせる、魔法の匂い。ピアノの周りのひな壇に立つと、自分は歌手なのだと錯覚してしまう。妄想癖のある私だけなのかもしれないけど。
と、こんなことを考えていたら伸びていた背筋が緩んでいくのがわかった。

そろり、そろりと準備室に近づく。

ん???

すらりとした長身が、ピアノに背を向け、背もたれのない椅子に座っている。


綺麗。

宇宙で藍色に染めたかのような濃い髪。
星くずのように散らばっている、ハイライト。
座っているから、微妙だが180は恐らくあると思わせる長身。


しらない。
こんな綺麗な人。

閑静な音楽室に、私の息と、彼の寝息。
シンクロして、心地が良い。

あぁ、そうだったのか。
だから、彼の音色は私にぴったりなのか。

根拠はないけれど、しっかりと確信が持てた。
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