星の街に君と私


「咲。あんた多分そのピアノに恋してんだよ。」

なんと、とぼけた事をいうか。
あっけにとられた私をもっと追い込む言葉をワンフレーズ。

「つまり、誰かも分からない演奏者に恋してんの」

そんな馬鹿な。
まず男か女も分からないのに。
例え、だったとしてもそれは憧れという類いに近いものだ。きっと。

「まぁ、女だったら残念だけどね」

夏樹は一口をほおりこんで、ケラケラと笑いながら私を見てにやけていた。


ない。ない。ない。

いや


あるかもしれない。



いつだったか、演奏会の時に靴棚に入っている上履きを私は見たことがある。サイズは明らかに女子ではないなと思っていた。
でも、こんなにもピアノが上手な男の子なら、きっと学校でも有名であると思ってたし、聞いたこともなかったから、上履きは忘れ物だと認識していた。

でも、明らかにその日から私は演奏者を男の子として想像することが多くなった。
繊細な音色のなから強調されるクレッシェンド。
そのなめらか且つ、力強さに、演奏者が男の子という期待もより一層強まった。
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