甘いキスに溺れてく
「こんな時間まで残業だなんて田辺は本当に頑張り屋さんだな!
今日はバレンタインデーだしてっきりデートかと思ったよ。」
「残念ながらデートする相手はいません。」
「田辺は美人だし彼氏が居ると思ってたよ。」
一ノ宮主任はきっとお世辞で言ってるんだろう。
私の気持を知ったらそんな事、絶対に言えない筈。
「私より一ノ宮主任は彼女とバレンタインデーを過ごさなくていいんですか?
もう21時を過ぎてますよ?」
「残念ながら彼女は居ないよ!
さっきまで得意先の接待に行ってて仕事があるって言って途中で抜けだしたんだ。
アルコールは飲まなかったけどな。」
一ノ宮主任って彼女が居ないの?
だけど私が居ないって言ったから私に合わせて彼女が居ないって言っただけかもしれない。
「だけど…接待抜けてそのまま帰らずに会社に戻って来てよかったよ。」
「……?」
私は意味が分からずに首を傾げた。
「それってチョコレート?
俺も一つ貰うな!」
「はい!」
一ノ宮主任は私の机に置いてあるチョコレートを口に入れた。
私は一瞬、一ノ宮主任が口に入れたチョコレートになりたいだなんて思ってしまった。