佐伯くんの好きなヒト
「あ、佐伯くんっ」
嬉しくて彼に手を振る。
横でなっちゃんが「…出たよエセ彼氏」なんて言ったけど聞こえないふりをした。
「ミユのこと迎えに来た。もう行ける?」
「あ、うん。ばっちりだよ」
ピースサインをしてみせたら、彼はふわりと笑う。
その笑顔ひとつで、私まで嬉しくなるんだから不思議だ。
「じゃあ、また明日ねなっちゃん!ばいばい」
「あー…うん。ばいばい、ミユ」
不本意そうに私を「ミユ」と呼ぶなっちゃんに心の中で謝りながら、私は佐伯くんとその場を後にした。