佐伯くんの好きなヒト
そして座った席順は、私と美優さんが隣同士で、その正面に佐伯くんというなんとも言えない形。
目の前で繰り広げられる美優さんと佐伯くんの話に、私は相槌をうちながらただ聞いていた。
それでも、佐伯くんは私に気を遣ってくれてるのか話しかけてくれて。
「深雪、これめちゃくちゃ美味しい」
美優さんの前だからあえて呼んでくれた『深雪』という本当の名前に心臓がうるさく鳴った。
本当は佐伯くんと2人で食べたい。
2人の時間を過ごしたい。
そう思っていたのに、美優さんがいることで彼が本当の名前を呼んでくれるのなら、それでもいいと思ってしまう。