100年分の恋の言葉
「は、原くん…?」

原くんはあたしの存在に気が付くと手招きをした。

あたしはちょこちょこと小走りで原くんの側へと行った。

「どうかした?」

原くんの隣にあたしは立つと、原くんの横顔を見て言った。

「俺、中野が好きなんやけど?」

「……え…?」

あまりにも真剣な原くんのまなざしで、あたしは戸惑った…。

いつも賑やかに感じる吹奏楽部が練習する音が今は、なんだか静かに聞こえて、胸の高鳴りが原くんに聞こえてしまうんじゃないかって焦った。

「すぐに返事が欲しいとか言わへんから…考えてくれん?」

そう言う原くんは、俯いて下唇を噛み締めている。

「嘘。…本当はすぐに返事欲しいよね?」

なんでか気付いた時には、あたしはそう呟いていた。


好きじゃないんだけど…

初めてメールをした時から、


"もっと側に行きたい"

"もっと知りたい"


って思ってたんだ。

だから良い機会かな、って思ったの。

そして、原くんの笑顔が守りたいって


あたしは心から思った。



「…うん。いいよ」



でも、このあやふやな気持ちは、なんなのか…あたしは分かっていなかった。


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