【エッセイ】『バックヤードの向こう側』
11 『遠き都へ』の話
いちばん気に入ってる作品はと訊かれると『遠き都へ』が愛着がある。
別に他の小説がどうのという訳ではなく、こういう作品の方が、個人的には読みやすい。
恋愛も小説には大事な要素だと、筆者は思う。
そこは否定しない。
が。
恋愛に至るまでの人間形成のプロセスというのが、読んでいると楽しいのである。
そこには親子の関係も、仲間との関係も、恋人との関係もある。
そのうち。
自動車のエンジンではないが、どのパーツをメインに据えるかで、作品の馬力は変わるように感じるのである。
キャラクターがしっかりしていないとパーツの組み立てはままならないし、部品が一部でも弱いと、どこかでいつか必ずダメになる。
そういうところを気をつけながら書いている。
その面で。
『遠き都へ』はあんまり恋愛の要素がないだけ地味な作品だが、いちばん小説らしい小説のように書きながら感じたことがあった。
一見、派手な物語に目はゆきがちだが、地味な作品には地味な作品なりの魅力があって、他の人が書いた作品でも渋いものを見つけると嬉しいものである。
さて、地味な作品を読んでどう感じるのか、楽しみである。