【エッセイ】『バックヤードの向こう側』
16 音楽の力
執筆の際に音楽は欠かせない。
BGMとしてヘッドフォンで集中して聴きながら夜中に2時間ばかり書いて行くと、予想外に展開がはかどったりする。
例えば『潮騒物語』のときはサザンの「希望の轍」やユーミンの「destiny」を聴いていたし、『穹窿』のときなんかはBUMP OF CHICKENの「天体観測」やいきものがかりの「ブルーバード」をかけたり…といった具合いに、である。
なので。
インスピレーションを与えてくれる、良い曲を書いてくれるアーティストのみなさんには大変お世話になっている…という訳である。
が。
なるだけ曲の世界に引っ張られないように、ピアソラのバンドネオンを聴いたり、ジプシーキングスのギターをかけたり…と、歌詞のないものをピックアップする日もある。
逆に。
普段ドラッグストアの有線放送で何気なく聴いた「トリセツ」をヒントに『穹窿』での手紙をよく書くキャラクターが生まれたりするというのもあるから、不思議なものでもある。
しかし。
書いてる間いっさい何の曲もかけなかった『碧の十字架』みたいのもあるから、必ずしもというものでもない。
気に入った音楽をかけながら書いて行く人はいると思うが、筆者としては集中したいので、ヘッドフォンも必需品である。
音が割れたりしてしまった日には、気になってしまってしまいには分解して修理したりすることもあって、
「あ、こんな単純な場所が原因やったんや」
とマスキングテープでコードを固定して、音割れを防いでから再び執筆したこともあった。
そうしたちょっとしたことをしながら、いつも書いていたりするのである。
知られざる話ではあろう。