【エッセイ】『バックヤードの向こう側』
19 『穹窿』の秘密
小説を書いてみると、たまにどうしてもいたずらめいたことをしたくなるときがある。
例えば他の作品に出てきたキャラクターを脇役に据えたり、いわゆるスピンオフというかたちで後日談を書いてみたり、である。
その一つとして。
実は『穹窿』には、ちょっと面白い仕掛けをほどこしてある。
最後まで読むと分かるのだが、実は物語のシーンが最後はプロローグにループするように小細工してあるのである。
こういう仕掛けをしてある小説というのは、寡聞ながら、意外なことに数が少ない。
しかも。
これは一度は読破しないと分からない仕組みになっている。
が。
これは別に筆者のオリジナルではない。
音楽の世界でかつて『皇帝』を書いたときのベートーベンが、第一楽章で冒頭に結句を持ってくるという技をやっており、いわばそれを小説でやってみただけなのである。
もう200年以上前のテクニックなので、パクりというより廃れかけた伝統技術に近いかも知れないが、こういう変わり種があっても良いかなと思うのである。
今、新作を構想している。
こうした面白い仕掛けの種が見つかれば、また仕掛けるかも分からない。