【エッセイ】『バックヤードの向こう側』
3 ゴスロリの彼女

ふと『潮騒物語』で思い出した話。

作品に出てくるロリータ服のキャラクターは、実は体験談から来ている。

まだ小説を書く前の時期、付き合った彼女がそういう趣味の女の子で、

「実はね」

着てデートに来ていいかなと言うので、

「そんなの気にしないで、デートに着て来ればいいやないか」

ということで、それから約3年ばかり、毎回そういうデートで過ごした時期があった。

なかなか個性的な女の子で、天然な性格も面白い。

一時は結婚も考えたが、彼女の周りが反対しているのを漏れ聞いて、なるだけ気づかれないように縁遠くなるように仕向けて、傷つけないようにして別れた。

それからは会ってすらいないが、彼女にバイクのタンデムから免許まで取らせたのも、好きなように生きることを教えたのも、考えてみると筆者であった。

一方で。

筆者も彼女にビジュアル系のバンドの世界を教わったし、個性的な女の子と付き合う楽しさを教わったのも彼女である。

いわば。

それまでの筆者の女性の好みを、彼女は変えた訳である。

人間の嗜好を変えるというのは、なかなか出来るものではない。

まだ筆者は。

他人の嗜好を、変えられるほどにはなってない。

その点で。

どれだけ素晴らしい人であったかが、ヒシヒシ分かるのである。

仮に会う機会が出来たらば、

「モデルにした小説があるよ」

と伝えてみようと思う。

もっとも。

恥ずかしがり屋な面もあったから、嫌がるかもしれないが。



< 3 / 20 >

この作品をシェア

pagetop