【エッセイ】『バックヤードの向こう側』
7 名前の重要性
名前の検索の話で触れたが、
「いかがわしげなものに使われてないか調べる」
という作業、これは簡単に思われて、なかなか骨の折れる作業でもある。
実際。
『穹窿』に出てくる結崎なぎさというキャラクターは実に3回も苗字の変更があった。
というのも。
最初に使った苗字で検索をすると、なんとアダルトビデオの女優に同姓同名がいたのである。
これにはさすがに参った。
『穹窿』を読んだ方はご存じであろうが、実はこの結崎なぎさというキャラクター、宝塚の娘役女優という設定である。
さすがにアダルトビデオはまずい。
こういうところも気を使わなければならないのは言わずもがなであるが、それよりこんなことでいかがわしげな業界と、名前の取り合いをしなければならないという現実に閉口した。
なので。
最近はなるだけマイナーな苗字を使うようにしてある。
これだけでだいぶいかがわしげな世界からは離れる。
また名前も、珍姓ならなるだけありきたりな名前を、ありきたりな苗字ならキラキラネームにならない程度の名前を、というやり方をしてからは、ほとんど杞憂で済むようになった。
また。
明るい場面に使われる店なら宣伝に供していただき、ネガティブな場面には名前は使わない…という手法も、よく使っている。
こういう気配りも、小説は必要なのである。