【エッセイ】『バックヤードの向こう側』
9 合う小説、合わない小説
前に『道頓堀ディテクティヴ』という作品を書いたことがある。
たまには毛色の変わった作品を書いてみようと探偵小説を書いたのであるが、ミステリーは性に合わないと書いてみて痛感した。
何しろ。
どうしても説明くさくなるのである。
個人的には「単語は絵の具、原稿用紙はキャンバス、ガラスペンは絵筆」という考え方で書いているので、ミステリアスに書けと言われても無理がある。
どうしても謎を持たせたまま書けない。
事象は簡潔かつ明快に、というレポートの癖がついた理数系の性である。
ただ。
探偵小説になぜか関西、しかも大阪のミナミが出てこない理由も、これで分かった気がする。
人間ドラマに血がかよいすぎていて、妙な人情話になりやすいからである。
どうやってもハードボイルドにはならない。
なので。
個人的には無理があるなと感じながらも、無理が目立たないようにと直し直し書いた。
意外にも若年読者層からの支持があるので、こういう小説を若い人たちは求めているんだなというのが分かる。
ちなみに。
恋愛小説は意外にも働き盛りの世代からの支持が多数で、まだ解析はしていないが、見ていて興味深いデータではある。
こうした傾向と、文体に合う内容を書けば売れるかというとそうでもない。
これが分かれば苦労もないのだが…。