失った愛を
目の前に広がるのは、いつもの天井と、
私をのぞき込む…うさぎのぬいぐるみ。
『お!目が覚めた?キミ、なかなか起きないから起こすのにも一苦労だね!』
やれやれ、といった様子で笑って話す
...うさぎのぬいぐるみ。
あたしは疲れているのだろうか。
ぬいぐるみが、動いて見える。
目を擦ってよく見てみる。
ぬいぐるみのはずなのに、
にこっと笑顔を作るうさぎ。
『あ、もしかして寝起き悪い方?
僕もねえ、低血圧だからよく分かるよ~。
朝とかほんっと辛いよね!
なのに周りはさっさと仕事しろとか、
はやくターゲットを探せとか、ほんっともう…』
最後の方は何を言っているか分からなかったが、それよりもなによりも重要なのは
ぬいぐるみが喋っているということだった。
『でさ〜、兄貴なんかね、、、
ってかさっきから何じろじろ見てんの!
照れるじゃん!!』
両手を顔の前にあてて赤面するうさぎを
無視して、あたしはもう一度布団にもぐった。