俺様上司は溺愛体質!?
「あんたもいい加減適当に帰りなさいよ。龍さん、ほんとに大丈夫?」
「いいよ。俺がタクシーに乗せるから。細布子も終電あるだろ?」
「うん。ごめんね、じゃあよろしくお願いします」

 信治郎と細布子の二人がいなくなると俄は急に静かになった。

(男難の卦ってなんなの……。ひどすぎる……。)

 ゴシゴシとカウンターを拭く音が聞こえる。そんな様子から彼の丁寧な仕事ぶりが伝わってくる。

「ねぇ、龍さん。いい女ってなんだろう……」
「さぁな」
「龍さんレベルでもわからないの?」
「百人の男がいたら百人のいい女がいるんだよ」
「じゃあ私は? 龍さんから見てどう?」
「そうだな……気持ちのいい女だ」
「ほんとに?」
「ほんとほんと」
「なんだか軽いなぁ……」

 だがたとえ社交辞令でも、ちとせの知る限り最高に大人っぽくて優しくて男前な龍さんに「気持ちのいい女」と言われたのは純粋に嬉しかった。
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