俺様上司は溺愛体質!?
〈Bastien〉はちとせもその名を知るフレンチの名店である。恵比寿にあることは知っていたが、予約は一年先までいっぱいと聞いていた。
「ではこちらへどうぞ」
年配の黒服の男性に二階を案内された。エレベーターもあると言われたが、ちとせは螺旋階段を登りたいと素直に告げた。
「シンデレラもこんな気分だったんでしょうね!」
「どんな気分だ……」
苦笑する真屋時臣だが、ちとせが楽しんでいる姿を見るのはまんざらでもないようだ。
個室に通されたあとも、椅子やテーブルの調度品に目を輝かせ、窓から見える景色にはしゃぎ、料理やワインに驚き感動するちとせをたしなめることはなかった。