俺様上司は溺愛体質!?
真屋時臣は立ち上がると、右往左往するちとせの背後に回り込んだ。
「ドレスのジッパーに引っかかったみたいだな。取ってやるから動くなよ」
「は、はい……」
まさか最後の最後でこんなことになるとは思わなかった。
(今度から気をつけなくっちゃ……。)
ちとせは素直にその言葉に従ったが、すぐにまた緊張し始めた。
真屋時臣の指先が、時折素肌の背中に触れるのだ。外してくれようとしているのはわかるが、どうやらショールの細い糸がほつれ、しっかりと噛んでしまったようで、なかなか手ごわいらしく、彼の指が背中を這う。
まったくもって彼にその気はないのかもしれないが、好きな男に触れられるというのはどうしても意識しないわけにはいかない。
(もう、無理!)
「真屋さん、ハサミを借りてきてもらえませんか。切ったほうが早いかも……」
「いや、でももう外れそうなんだ」
そしてまた真屋時臣の指が腰のあたりを動きはじめた。