俺様上司は溺愛体質!?
「すみません」
ちとせはぱちんと頬を叩き、それから改めて真屋時臣に向き合った。
彼が少し寂しそうに、それでいて皮肉っぽく笑うのは癖なのだと思う。
他人を笑うというよりは、いつも自分を責めているような、そんな気がする。
だからちとせは、思い切って抱きついたのだ。
精一杯両腕を伸ばし、背中を抱きしめる。
「こっ、こら、萩原。ダメだと言っただろう」
驚いたのは真屋時臣である。
理性のネジが飛ぶから早く離れろと言っているのに、ちとせはまるで子供のように、全身全霊でしがみついてくるのだ。
腕を振りほどくべきかと悩んだその次の瞬間、ちとせがハッキリした口調で言葉を続けた。
「……私、ちゃんと言ってなかったです」