俺様上司は溺愛体質!?

「あれ、これもしかして檜山さん?」

 二十代らしい檜山が店内で微笑んでいる。変わらず美しくセンスがあるのですぐにわかった。

「まぁ、檜山さんをご存知なんですか?」

 その瞬間、ちとせは我に帰る。ここにきた理由を思い出した。

「は、はい、実は……あの、ごめんなさいっ!」

 ちとせはソファから勢いよく立ち上がり、頭をさげた。

「えっ?」
「檜山さんに〈VEGA〉を教えていただいたんです、昔、通っていたって聞いて……」
「あらそうなんですね」
「それなのにこんな貴重な写真まで見せてもらって……ごめんなさい」

 些細な嘘とはいえやはり嘘は嘘だ。
 彼女の大事な〈VEGA〉を汚してしまった気がした。
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