俺様上司は溺愛体質!?

 手洗いを済ませ、リップを直しながら考える。

(もしここに織り機があったら……。『妖精の羽根』を復活させることができるわけで。いや、あんまり勝手な期待をするのはなんだけど、私が知ってたら、真屋さんきっとびっくりするよね。)

 思わず顔がにやける。

(って、ダメダメ。今考えがヨコシマな方向に向かいかけたわ。これは仕事の一環なんだから。)

 キリッとした表情を作り、瀧川の元に戻ろうと一歩踏み出した、その刹那。

「いらっしゃいませ……あら」

 新しい客が来たらしい。瀧川が挨拶をする声がした。

(お客さま?)

 ヒョイっと顔をのぞかせ、ちとせは凍りつく。
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