俺様上司は溺愛体質!?

 ただならぬ気配である。

 そしてそれは、他人の自分が見てはいけない類のものだ。わかっているが目が離せない。

「呼びつけたのはあなただろう。勝手だなどと言われる筋合いはない」

 どこか苛立ったような真屋時臣は珍しい。余裕がない。

「私は夜に来てって言ったのよ。積もる話もあるもの。いくら時間があっても足りないでしょう」
「積もる話をする必要はない」
「あるわ。五年も連絡一つよこさないで。フランスに行ったって人づてに聞いた私の気持ちを考えたことある? ずっとあなたのほうが勝手だわ。今だってそうよ。帰国するってどうして教えてくれなかったの?」

 瀧川の声は自分と話している時以上にしとやかで、ツヤがあった。

 ドキン、ドキンと心臓の鼓動が早まる。

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