俺様上司は溺愛体質!?

「……あの、どなたか来てました?」

 あくまでも何も見ていない風を装って顔を出す。

「郵便屋さんよ」

 そのにこやかな顔からは、真屋時臣と話していた時のような気配はさっぱりと消えていた。

「そうですか」

 ちとせがそれを信じていようがいまいが、どうでもいいのだ。
 ちとせも精一杯微笑んでみせる。

「素敵なものをたくさん見せてくださって、ありがとうございました」
「よかったらまた遊びに来てくださいね」
「はい。必ず」

 気を遣わなくてもいいと言われたが、ショーケースの中のピンキーリングを買って〈VEGA〉を出た。

 中で過ごした楽しい気持ちは一瞬で消えていた。


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