俺様上司は溺愛体質!?

「出張から戻ってきたら話すつもりだったんだが……当初目指していた『妖精の羽根』の復刻は、あくまでも過去を踏襲した上での新商品とはいえ、大前提として成型編みでなければならないと思っている」
「はい……」
「だが、難しいかもしれない」
「え?」
「そもそも上層部は最初から通常のストッキング素材で新商品を作れと言っていたからな。だから俺は、保険として大量生産品のラインも進めて上を納得させた上で、目玉としての『妖精の羽根』復活を目論んでいた」
「……織り機が手に入らないから、それはできないってことですか」
「そうだ。機械の持ち主が手放そうとしない。あれは美しいものを生み出せるのに、倉庫に眠らせたままにしたいらしい」

 真屋時臣は悲しげに目を細め、拳を口元にあてる。

「なぁ萩原……憎しみというのは永遠に続くものなのか。たとえ自分が幸せになれなくても……」



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