俺様上司は溺愛体質!?
「でも、先日私がここに来たのは偶然です。私も織り機がないかって探していて、檜山さんにここの話を聞いて、もしかしてって思ったものだから……。真屋さんに確認を取らないまま来てしまいました」
「そうだったのね」
瀧川は完璧に塗られたルージュの唇を上品に持ち上げ微笑む。
「じゃあこないだはビックリしたでしょう。聞いていたわよね」
「……かなり。立ち聞きしてごめんなさい」
頭を下げつつ、ちとせはカウンターにもたれてちとせの名刺を見つめる瀧川に詰め寄った。
「単刀直入にお聞きします。無理難題の条件を押し付けても、真屋さんが受け入れるはずないってわかってますよね」
「ええ、勿論。時臣はそんな男じゃないわ。うんとタフで、自分の意思を貫く強い男よ。織り機だって、今はダメでもきっと国外で探し出すと思うわ。だから私の嫌がらせはそう長くは続かない……もって一年がいいところね」
彼女は少し残念そうに目を伏せた。