俺様上司は溺愛体質!?
「だから……そういうのが馬鹿にしてるって言うんです。さっきご自分で言ってたじゃないですか。真屋さんは一年かそこらで他の織り機を見つけるって。それに私から言われたとか言わなきゃいいじゃないですか。普通に『嫌がらせやめる』って言えばいいだけでしょう?」
「……そうね。考えておくわ」
瀧川は頬にかかる髪を耳にかけ、うつむき、そしてフッと笑う。
「あなたが男だったらよかったのに」
「それは勘弁してください」
きっとあっという間に骨抜きだ。
突然の訪問を詫び、ちとせは〈VEGA〉をあとにする。
タクシーを拾う気にもなれなくて、一人でテクテクと駅まで歩くことにした。
真屋さんを幸せにしたい。
だけど、側にいることだけが彼を幸せにすることじゃない。
十年前の私はそれがわからなかった。
今日、ささやかだけれど、その手伝いは出来ただろうか。
徒労かもしれない。
(でも私、幸せだ。)