俺様上司は溺愛体質!?
 あの衝撃の再会から後、いつ脅しを受けるのかとビクビクしていたちとせだが、結局それは杞憂に終わりそうだと一週間ほどで気づいた。
 考えてみれば真屋時臣からして自分はごみみたいな存在であるはずなのである。

 彼に取っても自分とのアレは忘れたい過ちに違いない。
 向こうからわざわざ関わってくるはずがない。


(最悪とか最低とか言われたしね……。ほんと忘れるに限る。うん。)


 だがそう思っていても、ちとせの周りの人間は真屋時臣を放ってはおかない。
 必然的に彼の様々な噂を耳にすることになった。




「真屋時臣。三十二歳独身。身長百八十六センチ、体重七十五キロ。水瓶座のB型。家族構成は両親に兄と弟が一人ずつ。ひいおばあさんがフランス人で、その縁あってパリに留学経験あり。ちなみに常務は母方のおじさまにあたるんだとか。趣味は音楽鑑賞に乗馬。運動神経も良くてなにをやらせても一番だったとか、乗馬はオリンピックの候補生だったとか、いろいろ噂があるけど精査が必要かも……ってところね。以上が真屋時臣が対外的にオープンにしている情報よ」
「うん……タエちゃん。一息でそれ言えるのもすごいし、まずそれどっから調べてきたの?」


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