俺様上司は溺愛体質!?

 金曜日の夜、仕事帰りにちとせは百貨店で購入したマリアージュフレールを持って〈VEGA〉へと向かった。

「瀧川さん、こんばんは」
「いらっしゃい。もう、織子って呼んでって言ったじゃない」
「そうでしたね。織子さん」

 ちとせは苦笑しながら持っていた紙袋から中身を渡す。

「無事プレスリリースも終わったので、ご挨拶に来ました」
「わざわざありがとう。お茶を淹れるわ。座ってちょっと待っててね」

 瀧川はいそいそと奥に引っ込み、ちとせはソファに腰を下ろした。

 織り機を譲り受けて一週間後、ちとせは〈VEGA〉を一人で訪れていた。
 塩でも撒かれるかもしれないと思ってはいたが、礼を言わずにはいられなかったのだ。

 だが瀧川はちとせを受け入れ、それから特になんということもなく、奇妙な関係が続いている。



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