俺様上司は溺愛体質!?

「会えるわけないじゃない。私結構傷ついたのよ」

 確かに真屋時臣と瀧川の関係に介入してぶち壊したのは自分である。

「……ごめんなさい」
「責めてるんじゃないわ。いいの。私、親にも叱られたことなかったから、あれはあれで刺激的だった。いい経験をしたと思ってるの。でもね、それとこれとは別よ」
「それとこれと言いますと?」
「私と時臣の関係性と、あなたと時臣の関係性は別ってこと。結局あなたの言う通り、気が変わったって織り機を譲ってしまったから、時臣はあなたの手柄だってこと知らないままだわ」
「それは構わないですよ」
「でも、恋愛小説ならここで『お前のおかげだったんだな』ってなるのが定説でしょう」
「そう、ですか?」
「そうよ。だから私、失敗したなって思ってるのよ。本当はあの時勢いをつけて、ドラマチックに恋のフィナーレを迎えさせるべきだったんだって。なのに私ったら……今更だけど悔しいわ」

 なんだかどんどん雲息が怪しくなってきたような気がするが、織子を止めることはできない。
 どうやら自分が思う以上に彼女は夢見るお嬢様なところがあるのだ。

(やっぱり憎めないなぁ……いや、かなり困った人だけど。)
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