俺様上司は溺愛体質!?
自分がなぜこんな阿呆な茶番に付き合わねばならんのか。
腹が立ったが、気がつけば真屋は、駅に向かって走っていた。
そして走っている途中でタクシーを拾えばもっと早く着くと気づき、タクシーに乗ったはいいが、渋滞に巻き込まれ、途中下車。また駅まで走る。まさに徒労。
(三十を過ぎたいい大人が、たった一人の女が欲しくて、全力疾走か。いや、ここで足を止めたら俺は一生後悔するし、自分を許せなくなる!)
遠くに駅が見え、そこでようやくちとせがどこにいるのか確認する必要があると思い出し……。
とにかくかなりの遠回りをしてから、真屋時臣は萩原ちとせを抱きしめることができたのである。