俺様上司は溺愛体質!?
(そういう私もどんどん真屋時臣に詳しくなってるけど……。)

 半ば感心しながらパウダールームを出てエレベーターに乗り込む。


 真屋時臣に告白したのは十年前。
 あの時も十分素敵な人だったけど(とりあえず見た目は)、年齢を重ねて真屋時臣はなお手の届かないところまで行ってしまったような気がする。

(じゃあ私は? 真屋時臣にこっぴどく振られてからずっと自分の人生から逃げ回って来なかった?)

 いい女としか付き合わないと言われて傷ついた。
 だからって何にもない今の自分の全てが彼のせいだとはとても言えない。

(十六歳の女子高生だった私は、自分に価値があると思い込んでいた。その根拠不明な自信を、二十二歳の、おそらく社会人一年目だった真屋時臣に木っ端微塵にされたわけだけど……。だからってそのあと少しは努力した? 具体的には何にもしてないよね。いい女がなんだかわからないって腹をたてるだけだったかも……。)
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