俺様上司は溺愛体質!?
 ギクシャクしながら人事部長のもとに向かうと、そのまま奥の円卓のある会議室へ遠された。

(そういえば新人研修のとき、ここでお茶だしの練習とかしたんだよね……。今時お茶淹れる作法がどうのってなんて思ったんだけど、なんだかんだ言って営業部はお客様多いもんねぇ……。中には「おいしいお茶をありがとう」って言ってくれる奇跡みたいな人もいるし……。)

 そんなことを思いながら会議室を見回すと、窓際にこちらに背中を向けて立つ男性の姿があった。

(え……?)

 凍りつくちとせの前で、彼はゆっくりと振り返る。
 柔らかな微笑みを浮かべながらも全く隙のない、完璧超人真屋時臣である。


「急なことではありますが、あなたは今日から第三商品開発営業部に異動していただきます」
「はい?」


 第三商品開発営業部?

 そんな部署があっただろうか。

 真屋時臣はそんなちとせを見てもにこやかな表情を崩さない。

 代わりに人事部長が楽しげに間に入ってきた。

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