俺様上司は溺愛体質!?
 恐る恐る尋ねた。
 彼もまた社内の有名人で、面識はないが彼の存在だけは噂で聞いていたのだ。

 阿部潤。
 高校生の頃、モール内にあったプレズィールの直営店でアルバイトをしていたのだが、男性にもかかわらず一時期は全直営店の中で十分の一を個人で売りあげたという。社内の人間なら誰でも知っている、伝説の販売員なのである。

 そして高校卒業後はそのままプレズィールに就職し驚異の若さでエリアマネージャーに抜擢されたのだ。


「今日からエリアマネージャーじゃなくなったけどね。阿部潤(あべじゅん)です。そういう君は?」
「営業部で事務をしていた萩原ちとせです。えっともしかして阿部さんも……その、真屋さんところの?」
「えっ、そうそう!」


 嬉しそうにうなずく彼はさながら陶器で出来た西洋人形のようだ。キランキランのウルルンフェイスは、間近で見るとまさにファンタジーの領域である。

(はぁ、可愛い……。男を超越した、地上に舞い降りた天使って感じ。)
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