俺様上司は溺愛体質!?
「龍さん、チャイナブルーお願い」
「私はなんか美味しいの作って。さっぱりしてるけど甘いやつがいいな」
「なにそのふんわりしたオーダー。相変わらずちとせはワガママねぇ。そして細布子は冒険しないわねぇ」

 呆れたように信治郎が左右の女子二人を見比べた。
 しっかり者で猫系美人の細布子と、のんびり屋の子犬系ちとせは、何からまるで正反対であるが、妙に気があう同期である。

「だって真っ当なカクテルが真っ当に美味しいんだもの」

 細布子は至極真面目に答える。

「だって私のワガママ優しく聞いてくれるのもはや龍さんだけだし」

 負けじとちとせも同調した。
 ワガママもなにも仕事なので当然といわれるかもしれないが、ちとせはそれほど真っ当な優しさに飢えている。

「寂しいわねぇ、あんたたち」

 呆れたように二人を見て笑う信治郎の笑顔も案外優しいのだが、ふと思い立ったように彼は着物たもとに手を入れ、龍のシェーカー手さばきに子供のように見惚れるちとせの横顔に囁いた。

「そうだ。久しぶりに占ってあげようか」
「えっ、本当!?」
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