俺様上司は溺愛体質!?
いつも何かを睨みつけるように外を見ていた彼がまとう空気が明らかに違う。
黒縁メガネの奥の眼差しが優しいのだ。
(なんかいいことあったのかな? よかった。)
体はすし詰めの車両にあっても心ここに在らずといった雰囲気で、彼は一人、どこか浮世離れしていた。
春から夏、そして秋が来るまで、ちとせは車両の中で彼を見つめ続けた。
自分よりも早く乗る。そして遅く降りる。
だからどこで働いているのかもわからない。
最初のうちは見ているだけで満足だった。
学校で話題にはしない。
自分の心の中だけの王子様。それが彼だった。