俺様上司は溺愛体質!?

 信治郎は占いをよくする。しかもその占いがめっぽう当たると評判なのだ。
 評判が評判を生み、占い目当てに店に客が訪れるらしいが、信治郎は気が向いたとき、気が向いた相手にしか能力を発揮しない。

 ちなみにちとせは過去数回占ってもらったことがある。
 一番驚いたのは、就職活動で連敗が続き落ち込んでいた大学四年生の頃だ。

 ちとせの希望を聞き「ここは採用間違いなし」と言い切ったのが、今の勤め先である。だがプレズィールはあまりにも大企業過ぎた。

 ちとせの成績は悪くないが就職戦線において特別優秀というわけでもないのだ。
 けれど信治郎の後押しもあり試験を受けた所、なんと倍率数百倍をとんとん拍子でくぐり抜け、無事内定をもらったのである。

 もはや信治郎の占いは神のお告げに等しい。信じないはずがない。

「お願いします」

 ちとせは両手を差し出すようにして信治郎に向き合った。

「よしよし」

 差し出される両手のひらに顔を近づける信治郎。

「ふんふん……」
「なに、信ちゃん。素敵な彼氏ができるとかそういうの見える?」

 ワクワクしながら問いかけると、信治郎は「うーん……」とひとうなりしたあと、上目遣いでちとせの顔を見上げた。
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