俺様上司は溺愛体質!?
「送ってくださってありがとうございました。おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
タクシーを降り真屋時臣を見送るちとせ。
車が見えなくなってもちとせはしばらくその場から動くことができなかった。
結局タクシーの中では何も話せなかったが、それでも良かった。
(今日はちょっと近づけた気がする。ちょっとだけだけど……。)
マンションのエレベーターに乗り込み、唇に触れた。
前後不覚の状態ではない。確かにここに真屋時臣の唇が触れたのだと思うと、今更ながら息をするのも忘れそうなくらい苦しくなる。
(キス……。私のこと嫌いなら、しないよね。私のこと、多少は女として見てくれてるってことだよね……いや、もしかして嫌いでも嫌がらせでするかも! って、そんなわけないか。嫌いなら酔っ払いの私なんかタクシーに押し込めちゃうだろうし。じゃあ多少は好き……? いやいやいくらなんでも図々しいわ! 楽観的すぎる。あー、わかんない。前言撤回! 真屋さん、やっぱりわかんないこと多すぎるよー!)
部屋に入り、ベッドにダイブする。
けれどちとせはいまだかつてないくらい幸せな気持ちに包まれていた。
これは恋だ。間違いなく恋だった。