小話置き場
いつのまにか、誰のことも信じない人間になっていた。
でもそう思われたくなくて、ほんの少し、選びとった本音だけをこぼした。ときには嘘の『本音』も吐いた。
いつも誰かを疑っていた。
関わるべき人間、どうでもいい人間、できれば関わりたくない人間。
無意識に他人を三つに分けていた、もちろん口に出したことはないけど。
そうやって日々を生きていた俺。人と人との間をくぐり抜け、自分の望む方向へ関わりを進める。
いわゆる世渡りってやつが、俺は上手かったんだと思う。
友達は多かった。
でも、心の中はいつも何かが欠けていた。
それが何なのかわからなくて、焦って、走って、疲れて、諦める。何度も繰り返した。繰り返していることにも気づかずに、俺の感覚は麻痺していった。
麻痺した皮膚で、空気の中をさ迷った。学校という濁った青色の空間で、麗奈ちゃんはひたすら真っ青だった。