小話置き場
麗奈ちゃんは麗奈ちゃんのペースで、ゆっくりと歩く。走る。そして人にぶつかる。慌てる。謝る。仲直りする。再び歩き始める。
他人の目を気にしないから、他人の行動にもあまり関心のない人だった。
だから濁りない青なんだ。
彼女だけの、色なんだ。
その近くは心地よかった。
焦って悩んで、色んなことを考えて、上手に笑うことができなくなったとき、麗奈ちゃんの姿を見ていつも気が抜ける。
なにやってんだろうなあ、俺。
もっとゆっくり、しっかり歩けよ、って。
俺は唯一無二の、ゆったりとした居場所を見つけた。
その青の隣にいれば、俺の濁った青も少しずつ透き通っていくような気がした。
濁った彩りの中で、彼女だけが本物だった。
ふたりで見上げたあの空が、目に焼き付いている。
あれだけがやさしい色をしていた。
俺の、大切な青。
*
「やっほー、麗奈ちゃん」
二年の秋、文化祭準備で学校中が浮き足立っていた。