小話置き場
夏の終わりに麗奈ちゃんと慎也が付き合い始めて、俺はやっぱり嬉しいけど寂しくて。
そういう気持ちを紛らそうと、実行委員なんかやっている。
忙しくて忙しくて、いつも以上に気疲れした。頭の中で、色んな人間の顔と言葉が巡る。
もっとクラスを盛り上げなきゃいけない。
だから疲れた顔なんかできない。
そういう意識がいつもあった。そんな中暇ができて、段ボールに色を塗っている麗奈ちゃんの背中を見つけた。
「....お、トモ。お疲れ」
麗奈ちゃんはひとりで黙々とブラシを動かしてたけど、俺の声に気づくと顔を上げた。
彼女が塗っていたところは、細部まで綺麗に仕上がっている。
適当にやればいいのに。真面目だなあ、ほんと。
目を細めながら、その隣に座り込んだ。
「麗奈ちゃん、塗るの上手いね」
「あはは、そー見えるんならいいんだけど。何回も塗り直してやっと綺麗になったんだよ」
「完璧主義?」
「んーん、ただの意地」
そう言って、麗奈ちゃんはヘラリと笑った。無邪気な、力の抜けた笑みだった。