小話置き場


「……無理は、してないよ。大丈夫」

「それなら、いいんだけど。でもトモは、疲れてるときいつもあたしのとこに来るんだよ」


驚いて、今度こそ目を見開いた。


麗奈ちゃんが顔を上げる。目があって、何も言えなくなった俺の顔を見て、あははと小さく笑った。


「もしかして、無意識?」

「……わかんない。え、俺、そうだった……?気づかなかった、ごめん……」


麗奈ちゃんの隣にいると、疲れが和らぐのは知ってた。でも、疲れたときに麗奈ちゃんに声をかけてた意識はなかった。


だけど彼女はやさしく笑う。
いつから気づいていたのかはわからない。


本当に、本当に、優しい顔をしていた。



「謝んないでよ。いいよ、あたしも嬉しいからさ。あたしの前で、気抜いてくれるの。その方がゆったり話せるしね」



あんたのハイテンションは時々ついてけないから、なんて言って笑いながら、麗奈ちゃんは青く塗られた上に白を置いた。その手が、ゆっくりと空を描く。


俺は、なんだか泣きそうになっていた。


丁寧に塗られた青空はムラひとつなくて、無造作に塗られた真白な雲が、優雅に漂っている。

彼女は何も言わない。


静かに、やさしく、俺の弱さを受け止めていた。


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