小話置き場
僕らのブルー - sea's name -
「ねえ慎ちゃーーん」
彼の自転車の後ろに跨がって、河川敷を走る。
夏の気温が私たちの肌を覆い、至るところから蝉の声が聞こえてくる中、向かってくる涼しい風に目を細めた。
「なにー」
慎ちゃんの白いシャツが、風で柔らかく膨らむ。私の視界には、彼の背中となびく黒髪が映っている。このひとは二年生になってから、なんだか急に背が伸びた気がする。
中学校がいつもより早く終わった午後三時、私達は家へとゆっくり帰っていた。
「海行きたーい」
「このままー?」
「このままー」
セーラー服の青いリボンが、風でパタパタ音を立てた。
すれ違う人達が、私達を一瞥しては微笑ましいものを見るような目をする。私と慎ちゃんはそんなんじゃないけど、別にわざわざ否定するようなものでもない。
「俺さぁ、喉渇いたんだけどー」
「私も渇いたぁー」
「一回俺んちで水飲もうよ」
「おーけー」
ぐーと親指を立てて、慎ちゃんの顔の前に手を差し出す。
彼はそれを見たのか見てないのかわからないけど、まるで保護者みたいな口調で「ちゃんと両手で掴まってないと危ないからねー」と言った。