小話置き場
「……自信満々だね」
「利乃は俺がいなきゃだめでしょ」
「慎ちゃんもじゃん」
「そーだよ。利乃がいるから俺に彼女ができない」
「……人のせいにしないでよ」
彼女なんて、作ろうと思えば作れるくせに。わかってるんだから。慎ちゃんが、今まで女の子から何度も告白されてること。
知ってるよ、私。
君が私のこと好きだって、知ってる。
「利乃のせいじゃないよ。俺のせい」
穏やかな声で、慎ちゃんは言った。
道は熱いコンクリートに変わって、夏の日差しが私の肌を焼いた。
「利乃がいればそれでいいって思う、俺のせい」
ほんと、馬鹿だ。
私達、たぶんこのままじゃずーっとふたりきり。さびしいまんまだ。でもそれでいいって思う私もいる。
今は、今だけはこのままで。
この背中を誰より近くで見つめて、その大きな手のひらに包まれて、目を閉じていたい。
夏にふたりきり、愛しい青に身を委ねて、笑っていたい。
いつか私達が、大人になるまで。
ふたりきりじゃいられなくなる、どうかそのときまで。
このひとと、ずっと一緒に。