小話置き場
「……"きっと慎ちゃんがいてくれたら、もうなんにもいらなくなっちゃうね"……」
私の人生で、きっと最も純粋で美しい真実だった。
無邪気で純粋で、何にも知らなかった幼い"わたし"。
今の慎ちゃんにとって……あの頃の思い出は、どんな風に残っているのだろう。
遠くで、若い女性の笑い声が聞こえる。
近くで、仕事帰りのサラリーマンがたむろっているのが見える。
ほんの数年前まで、ただの背景でしかなかった"大人たち"の存在がやけに身近に感じられる。
私はもう、子供じゃない。
夏の眩しさ、風の温度、色濃い緑、空の高さ。
それら全てを身体中で感じて、大切なひとのことだけを想って生きていた、あの頃の私ではないのだ。
ーー〜♪〜〜♪〜
ふいに携帯が着信した。
電話に出ると、案の定、トモくんだった。